代表あいさつ

 IVR(Interventional Radiology)とは、X線透視装置などの画像ガイド下でカテーテル等を用いて、 外科手術と同等またはそれ以上の効果を得ることを期待した最先端の低侵襲治療です。 人医療でのIVRは腫瘍だけでなく心臓および脳血管系の領域に及び、主に放射線科やIVR科がその役割を担い急速に発展している分野です。 腫瘍領域のIVRは、血管造影を用いて腫瘍栄養血管に選択的に抗がん剤や塞栓物質を注入する動注療法に加え、 腫瘍による管腔臓器の圧迫を解除するステントやバルーン拡張療法なども含まれます。 腫瘍に関連したIVRは腫瘍IVR(Interventional Oncology)と呼ばれています。

 小動物獣医療における腫瘍IVR治療は未だ一般的ではなく、特に動注療法の報告は限られています。 伴侶動物である犬と猫の高齢化に伴って外科的切除が困難な進行がんの症例が増加しています。 これらの症例に対する局所療法として放射線療法が有望ですが、施設が限定されているなどの要因から治療を望まれない飼い主も多いのが現状です。 動物への負担の少ない腫瘍IVR治療は、そのような症例に対する新たな治療選択肢として期待されています。 腫瘍IVR治療の治療効果は、一般的に行われる全身への抗がん剤療法と比較して、施術者の技量やX線透視装置の性能に大きく左右されるところがあります。 さらにカテーテル、抗がん剤、塞栓物質などのデバイスの選択にも依存します。 小動物獣医療における腫瘍IVR治療はまだ始まったばかりで、人医療での実施方法を参考に試行錯誤して実施しているのが現状です。 この「獣医腫瘍IVR研究会」は、施設間での情報交換や人医療や企業と連携を図り、その手技や基礎的な情報を互いに得るための研究会です。 この研究会を通じて科学的なエビデンスを導き出し、小動物獣医療の発展に寄与することができれば幸いです。

獣医腫瘍IVR研究会代表
小林 正行
(動物先端医療センター・AdAM)

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